ドキュメント「青年の日」72時間②

■2月10日(火)9時■24時間め■

昨日の、同じ時間の騒がしさと違って、町がシーンと静まり返っている。いつもの道の学校の前を通ると誰もいなかった。

そうか、今日、学校休みなんだ。

本番の2日前にリハーサルをやって、前日は休みになる。不思議な日にちの組み立て方だね。前の日にリハやって、本番の次の日を休みにすりゃいいじゃん。

いや、なにか、こういう所一つとっても、純粋に感覚が違うってことか。

■2月10日(火)10時■25時間め■

町を歩いていると、ボコボコと太鼓を叩く音が聞こえてきた。

行ってみると、太鼓じゃなくって、子どもたちが水をためる用のポリバケツ缶をボコボコ叩いて、太鼓の練習ごっこをしていた。

他の子も、なんか洗濯板をこすってギコギコ音を出すとか、それぞれに楽器ごっこをやってるんで、微笑ましい。

―今日は学校休みなの?

「そう。」

―あした行進するの?

「する。」

学校ごとには、全員行進するわけではなく、学校の看板をもつとか、カメルーンの国旗を持って一番先頭を歩くとか、そういう名誉ある役に選ばれる子もいるわけなのだが、ちょっとした「打楽器隊」を組むところもある。

そういえばこの2週間くらい、いろんな学校で打楽器の練習してる音が聞こえてたっけ。たぶん、この破れポリ缶をボコボコ叩いてる子が明日の本番でドラムをたたく、っていうわけではなく、そういう一連の学校での練習をやっていて、太鼓をたたく真似がしてみたかったんだと思う。

バイバーイって言って立ち去ると、子どもたちはまたボコボコと同じリズムを果てしなくたたき始めた。

■2月10日(火)11時■26時間め■

局の出入りのジャーナリストのお父さんが亡くなったっていうんで、僻地村まで車に乗って、お葬式に行く。

イスラーム式の葬式だったけど、キリスト教徒も参加してる。

あんま、映画とかドラマとかでも見かけない光景だけどゆるゆる宗教の真骨頂でちゃったよ。ムスリムのこのジャーナリストと、彼をなぐさめるために来たキリスト教徒の同僚が抱き合ってる姿が印象に残った。

■2月10日(火)15時■30時間め■

本当にあらゆる学校が休みなのかな?って確かめようと思って、いつも散歩する道にあるちょっと離れた学校にも行ってみる。

シーンとしてて、誰もいなかった。高校生くらいなのが7、8人だべってる。このくらいの年代が、一番「やばい」層(日本人を見ると、無礼なコミュニケーションでからんでくる人たち)だなあ、って思ってると、友好的な雰囲気で話しかけてきた。

「ねえねえ、中国人の人。あちょー。」

―あちょー。おれ日本人だけど。

「そうなんだ。日本人がなにやってんの。」

―おれ町のテレビ局で働いてるんだけど。

「なにやってんの。」

―うーんと。カメラマンで監督でジャーナリスト。

「へーえ。テレビ作ってるんだ。何語で作ってるの?中国語?」

―だからおれ日本人だから。フランス語と日本語。バイリンガルで。

「へーえ。そうなんだ。英語はできる?」

―ごめん。英語はできない。そんじゃバイバーイ。

よく見ると、ここの学校はフランス語と英語のバイリンガル校だった。バイリンガルの授業がどんなもんか知らないけど、言葉だけでなくって、それにまつわる地理的なこととか歴史的なこととかも習うのだとしたら、いい学校だね。

■2月10日(火)17時■32時間め■

そろそろ帰ろうかな、って思ってるとラジオ局のおなじみ制作主幹が、

「ビヤ大統領の演説が20時からある。」っていう。そんじゃ、家でテレビ見ますわ。っていうと、「一回帰っていいから、また来て局で見ろ。」って。

えー、なんで。

演説を局の機材で録音して、それをCDに焼いて、明日の本番のセレモニーにて流すんだという。ってことを、役所の人に頼まれたらしい。なので、それをやってくれって。まあどうでもいいけど、いつもいつもビヤ大統領の演説は「何かイベント本番の、前日の夜」に放送されるので、それってなんで?って聞く。

日本だと、エンペラーでもプルミエ・ミニスターでもイベントの当日に演説するんだけど。そう言うと

「うーん、そんなこと考えたこともなかったな…」

って顔をしたあと、

「次の日のイベントのために…うーん、国民のモチベーションを高めるのだ」

っていう。まあ、そんなところで、深い意味はないみたい。

■2月10日(火)20時■35時間め■

じゃじゃんじゃ、じゃーん。

カメルーン国家が流れて、ビヤ大統領。「祖国を愛する若者たちよ。」と始まる。まあ、

「国を愛する汝ら人民に告ぐ」的な

そういうニュアンスで来ると日本人的には、独裁的な社会主義的国家をイメージするんだけど、これもあんまり深い意味はないみたい。

カメルーン政府が国民に対して「国を愛してほしいなあ」っていう気持ちと日本政府が国民に対して「国を愛してほしいなあ」っていう気持ちはおんなじくらいじゃないのかね。演説は、

・28万人の雇用を生み出したのでよかった。

・教育は、大学から小学校まで、世界の標準に合うようにしないといけない。

・これからは、インフォマティーク(PC使った情報処理)関連が大切。学校の授業でも先生増やした。

・あと職業訓練がなんとか。

みたいなことを言っていた。

■2月10日(火)21時■36時間め■

演説が終わったあと、うちのラジオ局では「識者を招いて、演説について語り合う座談会」番組を放送。そうなんだ。面白そうだな、と思ってちょっと残って聞いていこうかな、と思ったら、フランス語ではなく現地語のバムン語での座談会だった。帰った。

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ドキュメント「青年の日」72時間最終回

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ドキュメント「青年の日」72時間①~高校生クイズ

初出:2015年2月14日(土)

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