毎日温かい日が続いて、春の樹木がいっせいに花をつけだした。
四季のある国では、1年に何回か短い間町中が花の香りに包まれるっていうボーナスみたいな時期が訪れる。それはとても感動的で気持ちがいい。
もちろんカメルーンの話ではなく、某先進国の話です。任期のさいごに休暇で、海外旅行してる。まったくカメルーンには品物がないどころか、
人の心を豊かにしてくれる花の香りもない。
協力隊の教科書には
「途上国でないもの探しはするな」
「途上国にあるものを探せ」って書いてあるけど、俺はいまだにカメルーンにあるものを見つけられてない。
村落部で活動している隊員の中には、「村人たちは心豊かに生活している」と言う人もいるけど、わたくしの任地(中程度の都会)の人たちは、とても心豊かには暮らしてない。
みんなギスギスとして、言い争いをし合ったり、上の立場の人にこびへつらったり、妬みあったり、そういう生き方を好んで選んでいるように見える。この町の人たち全員が仮に100万ダラーもらったとしても、このギスギス感は変わんないような気がする。
そういうのが、この国の人々の特性なんだろうけど。
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そんで先進国で何してるかって言うと、郊外の語学学校の寄宿舎に逗留して、語学の勉強してる。
寄宿舎。ってのがいいね。昔のシャトーを利用した校舎とか敷地には木立がしげり、葉っぱをちらした冬のたたずまいが残っていて、こりゃあ萩尾望都だな。
ふだん仕事してるとなかなか集中して勉強できないので、今回は駒ヶ根の訓練を思い出して「自分合宿」として、
1日6時間×2週間
っていう授業のコースを申し込んだのだった。いやー。キツイね。語彙っつうか慣用表現とか、そういうのが、ことごとく分かりません。
がっかりするほどわかんないつうか。
「アベラールとエロイーズ」の話。名前しかしらんけど。美少女のエロイーズにちょっかいを出したアベラールは、エロイーズの保護者からちんこ切られて僧になる。その後エロイーズも尼僧となり、その後2人の間で多くの書簡が交わされる。
そんだけ理解するのに3時間くらいかかる。
そんで、「僧になる」の同義語はなにか、っていう問いがあって、「出家する」「仏門に入る」とか。かように日本語でも同義語はたくさんあるけど、フランス語でも同義語たくさんあって、そんなふうに語彙を覚える。
なんか、遠い世界に来た。
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先日ちろっと書いた、活動で制作したドキュメンタリー番組がアップできましたのでお知らせします。
カメルーンの国の人向けに作りました。
(「女性~見えない仕組みの中で」仏語。30分。)
そもそもは、他の隊員の活動の様子を撮影したいな、という動機から始まりました。カメルーンの国の人々の生活をよくしていこうという活動なのですが、僕にとっては、その活動自体よりも、活動を通して「日本人というガイジンが、カメルーンの国」について違和感を感じることが多いと。
その違和感を伝えることが大事
だと考えるようになりました。なぜなら、カメルーンの国の人たちは、とても自意識が強く、
「人の言うことに耳を傾けない」
「おおむね自分と、この国に満足している。」「昔からの習慣を、それが人を不幸にするものでも、変えたがらない。」
という性質があるように感じたからです。自己の検証をしたり、自分たちのことを客観的に振り返ることが少ない。
だから、日本人というガイジンが、第3者として、この国を見て「こうなんじゃないの」と言ったと。
それは、この国の人にとっては、気づかなかったことかもしれないし、薄々気づいていたけど、見ないことにしておいたことかもしれない。
「そのことを、カメルーンのみなさんはどう思いますか?」と、問いかけるための番組になりました。番組が、自分たちのことを振り返るきっかけになることをねらっています。
とりあえず、配属先では放送してるけど、他のところに出せるかは不明です。フランス語版のみで、日本語版がありませんが、なんとなく雰囲気をお楽しみください。
→ 【検証】激レアさん・小野洋文(バムン王国ディレクター)経歴・家族・年収は?
*初出:2015年4月19日(日)