)任地のバムン王国で、2年に1度の伝統的お祭りが始まった。
何度も書いて繰り返しになるけど、ここは近代国家の成立以前からわりかし広い版図を治めていた「王国」で、今も王室が主催して民族のアイデンティティを確かめる祭りをおこなっている。
月曜日から祭りが始まった。地元の人たちは盛り上がっちゃって、ひときわ伝統衣装を身にまとって町を練り歩いたりして、さながら仮装行列みたいだけど、まあ渋谷のハロウィンっていう感じもしなくもない。
自分も真似して、ニワトリの羽をむしって飾りつけした伝統の帽子を購入してかぶっているのだが、羽がとっても生臭くて、なかなかワイルドな気分です。
実は伝統、伝統、っていってもそのあり様も形骸化されていて、今や観光資源の一つになっている。町を見ているとクライマックスの週末に向けて、だんだん屋台やら物売りやらが増えてきたりするんで、人口20万のこんなしょぼくれた町が、急速に膨張しているのが見て取れてものすごいギャップを感じる。
「町が発展する」っていうのは、なぜだかある朝突然に起こる。この町が、観光客を迎えるためにいきなり膨れ上がった今週は、この町の20年後の発展した姿を先取りして見ているっていう気もする。
高度経済成長の日本でも、そういうことがあった。
カップラーメンの売り上げが、1年ごとに10倍になっていくっていうデータとかを見ると、すげかったんだな、って思うけど、やっぱこの辺境の町では、20年後の町の姿は20年後にしか訪れない。
今週いきなり発展したように見えた町の姿は、かりそめのものだろうね。
もうね。そういう錬金術みたいなことは、世界のどこでも起こらないんじゃないかな。明日からの週末で、祭りのクライマックスが始まる。夕方をすぎると、どこから来るのか、車が続々と列をなして訪れている。
今まで見たことのないものを見て、なんだかまことに壮観な思いがする。
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今週は、祭り関連の行事でサッカー大会やら美女コンテストやらが行われている。その一つのシンポジウムでは、「伝統遺産のツーリズムをいかに成熟させるか」っていうテーマで話し合われていた。
自分は見てないからわかんないけど、ここの人たち、ひそかにこの祭りを「世界遺産」的なものにしたいみたいだ。うーん。ねえ。
ここの人たち、目標は高いんだけど、いつもそう。仮に世界遺産にしたとして、観光客を迎えるために決定的に欠けているのは、
「おもてなし」ってことですよ。
ここの人たち、自分が大好きで、自分の民族が大好きで、
とっても排他的で、
俺なんか昼間っから襲われたり、何かを強奪されそうになったり、365日ゴルゴ的に緊張して暮らしているほど大変な町なんだから、できることなら来たくないって思うもの。
今回も協力隊の同僚ボランティアたちが遊びに来るんでホテルを予約しようと思ったけど、なかなかできなかった。
っていうのも「王室関連の予約が『後から』入るかもしれないので、 一般の人は予約できません」っていうことだもの。
一般の人は後にも先にもホテルの予約ができないんじゃん。
そんなもんがなんちゃら遺産になるわけない。20年後は無理だから、200年後に期待だ。
→カメルーンに行く人向け現地情報
「カメルーンの生活・文化」
*初出:2014年11月6日(木)